「伝説の大将軍」の戦い…。不論帝悪村出身の若武者、烈光頑駄無こと武者衛府弓銃壱は結晶鳳凰に認められ新世大将軍となり、天宮に災いをもたらす闇帝王を打ち破った。
平和を取り戻した天宮で、彼は轟天頑駄無の娘、姫天と結ばれ、武威之進と舞威丸という2人の息子を授かることとなる。天宮を治める「新世大将軍家」の誕生である。
この物語は、新世大将軍と、ある一人の武者の出会いを生んだ、知られざる戦いの一編である。
闇帝王との戦いから数年、新世大将軍の治世。とある地にお忍びで家族旅行中の新世大将軍一家が、賊の集団に襲われた。
賊は先の戦いで敗走した新生闇軍団の残党。 首魁は元・炎魔忍軍の猛将、火炎災(カエンサイ)である。
「ギャハハハ!自慢の刀を抜いてみなァ、大将軍!『若様』がどうなってもいいんならな!」
「くっ…」
「武威之進!!」
幼い武威之進を人質に取られ、身動きの取れない大将軍。背後にはまだ赤子の武威丸を抱いた姫天と、大将軍と背中合わせで賊の集団から彼女を守る轟天。
「…はなせっ!はなせよ!」
「おやめなさい、武威之進 !」
「ずいぶんと勇ましいガキだな。コイツが頑駄無軍団の『未来』ってやつか…十年先にはテメエが大将軍になってたかも知れねえが、残念ながら『大将軍家』はここで終いだ」
「…!」
光る短刀、凍りつく場。
「そこまでだ、悪党!!!!」
沈黙を打ち破る、はるか上空からの声。
その場にいた者全員が見上げた視線の先には、
鋼の翼を身に纏い、からくり武具で武装した見たこともない「頑駄無」の姿があった。
「愛と自由と正義の味方、飛天頑駄無超将軍、参上!!!!!」
金属光沢を放つ群青色の鎧。赤く巨大な爆動機(ジェットエンジン)を備えた鋼鉄の翼。羽ばたく鳥を大きく象(かたど)った金色の前立てを始め全身には鋲(リベット)が打ち込まれており、通常の武者とは異なる独特の雰囲気を醸し出す。
「超将軍だとォ…?頑駄無軍団の伏兵か!!おのれ大将軍め小癪な真似を!」
すかさず返す火炎災。忌々しげに新世大将軍を睨みつけるが、新世一家みな、見知らぬ闖入者に驚いた表情。
「…お前らもご存知ないのかよッ!?」
「頑駄無軍団?関係ないね!俺は子供を人質にとるような悪党が気に入らないだけだ!」
そう、彼は頑駄無軍団とは無関係の孤高のフリーランス武者、勝手に「超スゴイ将軍」すなわち「超将軍」を名乗っていたのだ!そもそも「将軍」なのに軍団を率いていないのもどうかという話もあるが、あくまで自称なのだからそれも仕方がない。
「まあいい、うるせえハエは叩き落とすまでよォ!野郎どもやっちまえ!!」
賊の砲撃が始まる。が、圧倒的な機動力の前に、銃弾は虚しく空を切るばかりである。
「は、疾い!!!」
「そっちが遅いのさ!いくぜ魂駆羅星!機獣王の陣!!!」
背部に装着した鳥型サポートメカ、魂駆羅星が大きくせり上がり、人機一体の高速戦闘形態に変形する飛天。
「機獣掃射!!!!」
肩の機銃からの連続射撃で手下を一掃、
すかさず爆発的な機動力で急降下し火炎災の元から武威之進を助け出す。
「今だぜ、大将軍様!」
「…!恩にきる!光鳳剣!!!!」
「ぐわぁ!!!!!!」
新世大将軍の一撃で首魁、火炎災は倒れ、残った賊は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
…夕刻。別れの時。新世大将軍は自らとその家族の窮地を救った若武者に感謝の言葉と、ひとつの提案を投げかける。
「ありがとう。君の助太刀がなければ、どうなっていたかわからなかった。どうだろう、これからは頑駄無軍団で、私に力を貸してくれないか?君の実力ならすぐにでも将軍として、部隊のひとつを任せたいのだが」
「頑駄無軍団ね…申し訳ないけど遠慮しておくよ。どうも人の上や下に立つのは苦手でね。俺は俺で、俺の正義に従うさ!」
「そうか…。それが君の言う『超将軍』なんだな」
「お兄ちゃんもう会えないの?」
「同じ正義を持ってれば、いつかどこかでまた会うかも知れないさ。今日みたいにな。おっとそろそろ『約束の時間』だ。じゃあな、大将軍様!」
「そうだな、またいつか!さらばだ、飛天頑駄無超将軍!」
爆動機を轟かせ、超将軍は飛び立っていった。
「…愛と自由と正義の味方、か…。」
「…軍団や組織ではなく自らの正義にのみ従って戦う『軍を持たぬ将軍』、それが彼の言う『超将軍』なのかもしれませんな」
「そうだな、轟天殿。時代が進み、いつか新たな災いがこの天宮を襲った時、希望となるのは彼のような武者達なのかも知れん」
「父上!そのときは俺が『超将軍』になって天宮を救うよ!『大将軍』もいいけどね!」
「あらあら、頼もしいわね」
「そうだな、武威之進。期待しているぞ!」
…知られざる戦いの中で、愛と自由と正義のために戦う一人の武者に出会った新世大将軍。
彼の心に刻まれた「超将軍」の称号は、後の世において閃光結晶に導かれ、大将軍の元に集まった七人の若武者に与えられる。
一方で、飛天頑駄無は時空を超え辿り着いた世界で、自らが目指した姿とはかけ離れてしまった「超将軍」達と戦うことになる。
原初(はじまり)の超将軍として、その「欠落した世界」での「新世大将軍」とともに…。
次回を待て!
written by しゃばろくさん@shaba63
新世大将軍制作:皐英司@satsukieiji